キャリア半世紀を超えてなお、ポピュラー・ミュージックの最前線で奇策を繰り出し続けるポップ界至高の異才兄弟、Sparks。通算28作目となるアルバム『Mad!』は、前作『The Girl Is Crying In Her Latte』の成功や映画『アネット』での旋風を経て、衰えるどころかさらに変態的なひらめきと鋭利さを増した大快作に仕上がっている。
ロン・メイルの手による歪んだシンセ・ラインとドラマチックなコード進行、そして御年70代後半とは到底思えないラッセル・メイルのファルセット・ヴォーカルの掛け合いは、まさに「Mad!(狂気)」そのもの。ミニマルなシンセ・リフの反復から劇的な展開へと雪崩れ込む楽曲構造は、初期のグラム・ロックやGiorgio Moroderプロデュース期のディスコ・パンク、さらには近年のオーケストラル・ポップの要素までを贅沢に飲み込んでいる。
日常のふとした奇妙なシチュエーションを皮肉とユーモアで切り取る歌詞の冴えも健在だ。フェスの大型ステージから小さなクラブまで、一瞬で彼ら独自のシンフォニックかつアバンギャルドな劇場空間へと塗り替えてしまう力に溢れている。ポピュラー・ミュージックの枠組みを嘲笑うかのように拡張し続ける彼らの現役感に、ただただ平伏するしかない。

今日の一枚
Sparks / Mad!
収録曲
1 Do Things My Own Way
2 JanSport Backpack
3 Hit Me, Baby
4 Running Up A Tab At The Hotel For The Fab
5 My Devotion
6 Don’t Dog It
7 In Daylight
8 I-405 Rules
9 A Long Red Light
10 Drowned In A Sea Of Tears
11 A Little Bit Of Light Banter
12 Lord Have Mercy
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